祝 ネリベル生誕100年! 2019年
2019年はネリベル生誕100年でした。これを意識したプログラムが各地で行われ、ネリベルを再評価する機会になりました。当方で把握できたイベントをご紹介いたします。他にもあれば情報をお寄せください。
■2月13日 尚美ウインドオーケストラ
第43回定期演奏会(東京)
「サ・イラ」「音楽の捧げ物」「交響的断章」(大井剛史) 終了
■3月3日 シンフォニエッタ静岡 第56回定期演奏会 ブラスのひびき(静岡)
「金管と打楽器のための音楽(日本初演)*」(中原朋哉) 終了
■5月5日 プロウィンド023 第9回定期演奏会 ネリベル生誕100年記念特集(山形)
「フェスティーヴォ」「トリティコ」「二つの交響的断章」(大井剛史) 終了
■6月15日 東京佼成ウインドオーケストラ 第144回定期演奏会(東京)
「シンフォニック・レクイエム(Bar.久保和範)」(大井剛史) 終了
■9月21日 名古屋フィルハーモニー交響楽団
名フィル・ウィンド・オーケストラ2019(名古屋)
「フェスティーヴォ」「ゴールデン・コンチェルト(Tp.宮本弦)**」「ヤマハ・コンチェルト***」「二つの交響的断章」(大井剛史) 終了
■11月3日 名古屋アカデミックウインズ 室内楽シリーズ(名古屋)
「ディヴェルティメント(Sax.)」「コラールと舞曲(Cl.)」「ヌミスマータ(Brass)」「リチェルカーレ(Cl.,Sax)」「神はわがやぐら(Brass, Organ)」 終了
■11月16日 東京藝大ウィンドオーケストラ 第88回定期演奏会(東京)
「復活のシンフォニア」(大井剛史) 終了
■11月23日 広島ウインドオーケストラ 第52回定期演奏会 ネリベル生誕100年記念(広島)
「交響的断章」「二つの交響的断章」「クロノス(日本初演)****」「シンフォニック・レクイエム(Bar.加藤宏隆)」(下野竜也) 終了
■12月10日 洗足学園音楽大学グリーン・タイ ウインド・アンサンブル 2019年度演奏会(神奈川)
「アンティフォナーレ」(ダグラス・ボストック) 終了
■12月21日 オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ いずみホール特別演奏会(大阪)
「交響的断章」「プレリュードとフーガ」「フェスティーヴォ」「トリティコ」(伊藤慶亮)終了
■12月27日 Filos Wind Orchestra(FWO)
「時の終わりへの行進」(岡村雄之典)終了
* ** *** **** 楽譜提供協力
ヴァーツラフ・ネリベルは1919年9月24日、チェコスロヴァキア(当時)のポラーンカ・ナト・オドロウ*に生まれた。プラハ大学(現・プラハ・カレル大学)、プラハ音楽学校、そしてスイスのフリブール大学で学んだ。1939年から1946年の間、ラジオ・プラハ、後にスイス国立放送で作曲家・指揮者を務めた。1950年にミュンヘンのラジオ・フリー・ヨーロッパ(自由ヨーロッパ放送)に勤務後、57年にニューヨークに渡り、62年に市民権を獲得した。
ネリベルはアメリカで吹奏楽と出会い、作曲や客演指揮に専心する。膨大な出版作品には《トリティコ》《フェスティーヴォ》《交響的断章》《二つの交響的断章》といった吹奏楽の名曲が名を連ねる。作品は個性的で、短い音列の反復による堅実な展開、古い旋法と大胆な不協和音の共存、管楽セクションの輝かしい響きや打楽器群に代表され、それらを総称し「ネリベル・サウンド」と呼ばれることもある。ペンシルヴェニア州スクラントン大学に在職中の1996年3月22日に76歳で死去した。
「Václav Nelhýbel」はチェコ語の原綴。
*「ポラーンカ」と略されることもあるが、同名の町との混乱を避けるため正式名で表記。町のサイトには町史にネリベルが写真入りで記載されている(チェコ語)。
【関連主要サイト】
Vaclav Nelhybel(スクラントン大学内の公式サイト)
Star Music Publishing(ネリベルの作品を没後出版中。一部試聴・閲覧・購入可)
Ars Nova Music(ネリベルの作品を没後出版中。閲覧・購入可)
Cimarron Music
Press(ネリベルの作品を没後出版中。購入可)
Ludwig Masters
Publications(ネリベルの編曲作品を出版中。一部試聴・閲覧可)
Hope Publishing
Company(ネリベルの宗教曲を出版。閲覧・購入可)
Vaclav Nelhybel, a conversation with Bruce Duffie(当サイト内の日本語訳はこちら)
吹奏楽と出会った1975年に《フェスティーヴォ》、翌年《プレリュードとフーガ》、また翌年は《交響的断章》を聞いて魅了されるという幸せなスタート。ネリベルの高い緊張を伴う美しさは常に憧れの対象でした。
時は過ぎ、1995年に中学校の吹奏楽部顧問として初めてコンクールで指揮したのが《フェスティーヴォ》。その年、アルフレッド・リードの本の原稿を提出し終わり、次はネリベルの本を書こうとご本人に手紙を送りましたが、宛先不明で返送されてきました(当時ピーター・ブーンシャフト氏のネリベル研究もすでに入手していました)。その数ヶ月後にネリベル逝去の知らせ。悲しみに暮れながら、某一流吹奏楽誌にネリベルの追悼文を寄稿したい旨のメールを送りましたが無視。同誌にはこの吹奏楽界の恩人の死を悼む特集どころか、訃報の1行すらありませんでした。その無念さから自分で情報を発信しようとホームページを作り、ネリベルの一周忌の1997年3月22日に公開しました(その日は福井にいて、武生東高校の植田
薫先生のお宅でアクセスカウンターを起動しました)。
ところがネリベルの作品リスト作りは途中で挫折し、自分自身の多忙さもあって、ホームページは長年放置状態でした。ただ、ネリベルの楽譜は見つけ次第購入し続け、簡単なアンサンブル曲を練習曲として生徒たちに与え、独特の響きや音楽的な深さ、教育的効果を実感してきました。
ネリベルの没後20年(2016年)を契機ににあらためてホームページの充実を図ると共に、膨大な作品群の整理と普及に向けて腰を上げました。
第一弾として、2015年12月にピアノと吹奏楽のための《トッカータ・フェローチェ》を洗足学園大学で日本初演していただきました。
2016年9月に米国スクラントン大学のネリベル・コレクションで未出版曲の楽譜や音源を調査。没後20年、そしてネリベルの誕生日である9月24日(生きていれば97歳)、ドロシア夫人の案内で墓参りをしました(写真右)。
2018年10月にネリベル・コレクションで2度めの調査を実施、同年12月に洗足学園大学における《サンド・サイレンス・ソリチュード(S-S-S)》の世界初演をサポートしました。
ドロシア夫人からは未知の曲の楽譜や録音をお預かりしており、その活用を進めているところです。